
従来から日本基準においてもセグメント情報を注記として開示することが義務付けられていました。求められるセグメントは事業の種類別、所在地別及び国・地域別ですが、その切り口は非常に大雑把です。開示項目も売上高、営業利益、資産、減価償却費、資本的支出のみで、国・地域ごとに至っては売上高の開示だけでいいことになっていました。
さらに、大企業の2割近くは、単一セグメントまたは重要性が低いとの理由で、セグメント情報そのものを作成していないというのが現状です。
従来の日本基準におけるセグメント情報は、非常に形骸化しているというのが実情です。
これに対して、IFRSでは、企業の最高経営意思決定者(Chief Operating Decision Maker: CODM)が経営上の意思決定や業績評価の際に実際に使用する構成単位に基づくセグメントで開示することを求めています。
最高経営意思決定者とは一体誰なのかというと、それは必ずしも社長やCEO, COOではありません。ここで求められていることは、要するに社内の管理会計で用いている切り口で財務会計上も開示しろということです。この考え方を「マネジメント・アプローチ」といいます。
日本の会計基準も、コンバージェンスの一環の中で、マネジメント・アプローチによるセグメント情報の開示が2010年4月以降義務付けられます。
マネジメント・アプローチは、本来内部的な経営管理ツールである管理会計の視点を、そのまま制度的な開示に持ち込めということですから、いろいろな意味で画期的なことです。株主や投資家にとっては非常に有用な情報提供になることは間違いないでしょう。そこまで台所事情を開示しなければならないことに抵抗感があるかもしれませんが、いずれにしても、これからは管理会計と密に連携した決算体制とシステム的な仕組みが不可欠になるでしょう。
ただし、管理会計の仕組みを持ち込むのはセグメントの切り口だけです。開示項目については、管理会計の扱っている項目をそのまま開示すればいいわけではありません。IFRSでは、約10項目の損益情報に加えて、資産情報と、場合によっては負債情報も開示することが必要になります。
これだけの開示項目に対応できる管理会計の仕組みになっていない場合は、IFRSの要請に合わせて管理会計の仕組みを見直す必要も出てくるでしょう。
ただし、管理会計がIFRSに引っ張られすぎないように注意しなければなりません。管理会計は、あくまでも内部の経営管理のためのものであっって、その仕組みを決めるのはそれぞれの会社の経営思想であり経営スタイルです。IFRSという一律的な制度の影響を受けすぎて、自社の経営管理に役立たない管理会計の仕組みになってしまっては本末転倒です。
ただでさえ、あまりよく考えずに財務会計の延長上で“管理会計らしきもの”を構築している企業が少なからずある現状において、さらにIFRSの影響を受けた管理会計になってしまったら、企業は経営する上での羅針盤を失ってしまいます。
IFRSという制度に対応しつつも、管理会計はあくまでも自社の経営管理に役立つ仕組みでなければならないことは忘れてはなりません。自社の経営がIFRSに振り回されないようにするためにも、今こそ管理会計の見直しと強化が必要といえます(図)。
